カナヘビは、人になつくの?

本記事では、このような疑問にお答えします。
- 赤ちゃんカナヘビから育てればなつくと聞いたけど本当?
- ネットでべた慣れしているカナヘビをみた!自分がカナヘビもベタなれにしたい!
「カナヘビってなつくの?」という質問の答えは、
“なつかない” けど ”なれる” です!!
本記事では、カナヘビが人になつかない理由と、人へのならせかたについて、実例を踏まえながら解説します。
本記事の内容を日々実践することで、カナヘビが徐々にあなたになれて、ピンセットからエサを食べてくれるようになる(かも)でしょう!
カナパパってこんな人

それでは、本題にはいっていきます。
社会性と”なつく”の関係性

社会性とは、「生き物の根本的な性質・特性で、集団を作って生活すること」です。

社会性のある生き物って、どんな行動をとるの?

社会性行動として有名な例を挙げて、説明しますね。
例えば、『ヒヨコの刷り込み学習』は有名ですね。孵化したてのヒヨコは、目にした生き物を”親”として認識し、後追いをする行動を見せるものです。
カナヘビには社会性がない
爬虫類全般にいえることですが、カナヘビは、社会性を持ち合わせていません。

分かりやすいように、社会性のある生き物と、カナヘビとの行動を比較してみましょう!
社会性のある動物とカナヘビとの行動特性比較
行動特性 | カナヘビ | 社会性のある生き物 |
日々の行動 | 単独行動 ※縄張り意識をほとんど持たない | 同種と群れをつくる、 群れの中で上下関係がある |
育児 | 一切しない ※親カナヘビが赤ちゃんを、 エサと認識して食べてしまうこともある | 親が卵や赤ちゃんを保護する 親がこどもに狩りの仕方や群れのルールを伝達する |
狩りの仕方 | 単独で狩りをする | 同種と協力して狩りをする |
カナヘビの行動特性を、具体的に説明していきますね。
単独行動
カナヘビは、生まれてから死ぬまでの生涯、単独行動をする生き物です。群れなどは一切つくならないため、群れの中での上下関係なども一切ありません。

まあ、縄張り意識もほとんどありません。バスキングスポットにカナヘビ同士が密集しても、お互いを威嚇することもありません。満腹時であれば、エサであるコオロギに乗っかられても微動だにしないほどです。


カナヘビは、自分に害のある生き物でなければ、「我関せず」なのです!
親は一切の保護・育児をしない

親カナヘビは、卵や幼体の世話も一切しません。それどころか、自分のこどもという意識すらないため、エサと間違えて赤ちゃんカナヘビを捕食してしまうことすらあるのです。大きくサイズの異なるカナヘビを多頭飼育しないようにしてください。
さらには、カナヘビを飼育して2年、親カナヘビが、産んだ卵を食べるという衝撃シーンを観察することもできました。

生まれて間もない赤ちゃんでも単独で狩りをする
単独で行動するカナヘビは、もちろん狩りも単独で行います。
自分より大きな獲物を仲間と協力して捕獲したり、怪我で狩りができないカナヘビに獲物を分け当たれたり、といったチームプレイは一切ありません。視界に入った獲物は、他のカナヘビが捕獲済みだろうと、容赦なく取り合います。

生まれて間もない赤ちゃんカナヘビですら、自らの力で狩りをしなければならないのです。

赤ちゃんカナヘビは獲物の捕食も下手で、食べられるものが少ないです。赤ちゃんカナヘビを飼育下で育てることは難しいですが、十分は知識を身につけておけば難しくありません。
社会性のないカナヘビは人になつかない

これまでの説明で、カナヘビは社会性がない生き物ということはわかりましたね。
人になつく動物は、必ず『社会性』を持ち合わせています。飼い主のことを、”親”や”群れの仲間”という感情・感覚でコミュニケーションをとってくるわけです。
一方、社会性のないカナヘビは、人間に対して、親子や仲間意識を持つことがありません。要は、なつかないのです。
“なつかない”けど”慣れさせる”ことはできる


カナヘビはなつかないのか、残念。
と思った方に朗報です!!
上述した通り、カナヘビは決して人になつくことはありません。しかし、人に慣れさせることはできるのです。

”なつく”と”慣れる”って、具体的にどう違うんですか?

いい質問だね!
それでは、わかりやすいように、具体例をあげていきましょうか。
なつく生き物
- 飼い主を判別できる(見た目・匂い・声など)
- ペット側の方から、飼い主に対してスキンシップを求めてくる
なつかないけど、慣れる生き物
- 人に触られたりケージをメンテナンスされることに対して、過剰な反応や警戒をしない
- エサの時間になると近寄ってくる
上記が、”なつく生き物”と、”慣れる”生き物”の違いです。
ちなみに、捕獲したばかりでまったく人慣れしていないカナヘビは、こんな感じです↓↓
まったく人慣れしていないカナヘビ
- ケージのメンテナンスをしようものなら、パニックを起こしケージ内を暴走する
- ストレスを感じ、与えたエサなどを食べてくれない
ケージのメンテナンスのたびにパニックを起こし大暴走することもしばしば、極端に人慣れしないカナヘビは、ストレスのあまりエサを食べてくれないことすらあります。
もはや、飼育に支障をきたすレベルです。
私の経験上、捕獲から2週間~1か月ほど経過すれば、飼育環境にもある程度慣れてくれ、飼い主の手を入れるだけでパニックを起こすようなことは無くなってきます。
※もちろん、個体差はありますので、永遠に全く人慣れしてくれないカナヘビもいることをお忘れなく…。
これまで飼育してきたすべてのカナヘビが、一向に慣れる様子がない場合、カナヘビに対してNGな行動(本記事内へリンク)をしていないか、振り返ってみてください。
カナヘビを慣れさせる方法

上述したとおり、カナヘビは人になつきませんが、長期間の努力により、飼っているカナヘビを人慣れさせることはできます。

せっかくカナヘビを飼育するなら、やはり人慣れさせたいですよね?
ここからは、カナヘビを人慣れさせる3つの具体的なコツをお伝えします。
- 過度なスキンシップ
- 上からの観察
- 飼育ケースを床に置く
人慣れしたカナヘビは、野生のカナヘビのように過剰に人から逃げることはありませんし、ピンセットからエサを食べてくれる、手の上でおとなしくしてくれるなど、愛くるしい姿を見せてくれますよ。
それでは、1つずつ、説明していきましょう!
カナヘビを人慣れさせるコツ① 繁殖させた赤ちゃんカナヘビを飼育する
人慣れしやすいカナヘビ
- 若い野生のカナヘビ
- 飼育下で孵化させたカナヘビ ←人慣れさせる上では超絶オススメ!!
カナヘビを人になれさせるためには、飼育下で孵化させた赤ちゃんカナヘビを選ぶことが一番の近道です。
成熟した個体は、生まれてから今日に至るまでの『人間への警戒心』が根付いてしまっています。しかも、捕獲する際、カナヘビからするとものすごい恐怖心を与えるわけです。警戒心・恐怖心を取り除いてあげるためには、長い期間が必要です。

個体によっては、一生慣れません!!
一方、飼育下で孵化させたカナヘビや、生まれて間もない野生下のカナヘビであれば、圧倒的に人に慣れやすいです。

赤ちゃんカナヘビを育てるための手順も別記事でまとめていますよ。
カナヘビを人慣れさせるコツ② 餌やり時のルールを覚えさせる
カナヘビは、一定の学習能力は備えています。そのため、餌付けを通じて人間に慣れさせることができます。給餌の際は、下記のようなルールを繰り返し実施してみましょう。
餌やり時のルール例
- ピンセットやエサ容器を見せる
- エサをくれる飼い主の声を聞かせる


我が家のカナヘビたちも、エサ容器を見ると水槽越しにクレクレモードになったりします。

どうしても、容器が見えたら、「ごはんの時間だ~」って駆け寄ってしまうのよね♪
カナヘビを人慣れさせるコツ③ NGな行動は絶対にしない

日々のお世話で人間への恐怖心を与えてしまうと、いつまで経ってもカナヘビが慣れてくれないのは当然です。私たちの何気ない行動が、カナヘビにとって多大なストレスを与えてしまっている可能性があります。
今一度、日々のお世話の仕方を振り返ってみましょう。
カナヘビを慣れさせるためのNG行動3選
ここからは、カナヘビを慣れさせるために絶対にやってはいけないことを紹介します。
- 過度なスキンシップ
- 上からの観察
- 飼育ケースを床に置く
1つずつ、解説していきます。
カナヘビを慣れさせるためのNG行動① 過度なスキンシップ

カナヘビは孵化してから一生、単独で行動する動物です。過度にスキンシップを取られては、ストレスや恐怖心の原因となってしまいます。
カナヘビは、原則ハンドリング(手の上に乗せて、スキンシップをとること)はできないペットと認識しましょう。

可愛いペットとスキンシップを取りたい気持ちはわかりますが、ほどほどに・・・。
カナヘビを慣れさせるためのNG行動② 上からの観察

カナヘビを飼育ケースの上から観察しないようにしましょう。
カナヘビの天敵は、鳥類やヘビなどの爬虫類、猫やタヌキなどの哺乳類で、頭上より襲われるケースが大半となります。私たちがカナヘビの頭上から観察をしてしまうと、カナヘビは天敵と勘違いし恐怖心を抱いてしまうのです。

知らないと、けっこうやりがちな行動ですよね。注意しましょう!
カナヘビを慣れさせるためのNG行動③ 飼育ケースを床に置く
上から観察しないこともそうですが、飼育ケースを床に置いてはいけません。カナヘビからしたら、人間が歩くたびに地響きがおこるようなものですからね。
【参考】インターネット上で見かける”ベタ慣れ”したカナヘビ

「カナヘビはなつかないというけど、ネットやYOUTUBEなどでベタ慣れの動画を見たぞ!」という方もいることでしょう。しかし、忘れてはいけないことが2つあります。
- なついているように見えるように取捨選択されたもの
- 世の中には例外が存在する
1つずつ説明していきますね。
なついているように見えるように取捨選択されたもの

インターネットを見ていると、カナヘビ以外でも、一般的になつかないとされる動物のベタ慣れの様子がアップされているのを見かけますね。
しかしその動画は、飼育者・撮影者が何十回、何百回も撮影を試し、なついているように編集を加えられた、いわゆる取捨選択された動画であるということ!!
具体的な動画で説明しましょう。

↓↓↓の動画は、我が家で生まれ、ベタ慣れした赤ちゃんカナヘビです。
「遊んでくれ~」とねだってきて、飼育ケースに手を入れると自分から手に乗ってきてくれます♪
さて、動画紹介と動画だけを見たとして、どのように感じましたか?
「カナヘビって赤ちゃんから飼うとなつくんだ!!かわいい~」と思った方、いらっしゃいませんか?
上の動画は、確かに我が家で生まれた赤ちゃんカナヘビで、野生で捕獲した個体と比較すると、圧倒的に人に慣れています。
しかし、常にカナヘビから寄ってくるようなことは一切ありません。

私たちカナヘビが、なついているかのように撮影を数十回繰り返したうえで一番良いものを採用し、前後はうまくトリミングしていたのね・・・。
もちろん、全てのコンテンツが試行錯誤の上、編集されているとは限りません。
ただし、世の中の発信者すべてが、事実をありのまま発信しているわけではないことを忘れてはいけません。
世の中には例外が存在する
2つめは、「何事にも例外は存在する」ということです。
私も、人になつくことがない昆虫(カマキリやハチなど)が、飼い主にベタ慣れしてる動画を見たことがあります。
このような例外の動画を鵜呑みにして、「自分も虫を手なづけてやる」と試したところで、一般例という壁にぶち当たるわけですね。
もう1度いいます。
カナヘビは一般的には飼い主になれることはあっても、なつくことはありません。

「カナヘビはなつく」という過度な期待は厳禁ね!!
まとめ
本記事のまとめです。
- 社会性と”なつく”の関係性
- ・社会性のない生き物は、そもそもなつかない
・カナヘビは社会性のない生き物
・カナヘビは、“なつかない” けど ”慣れさせる”ことはできる - カナヘビを慣れさせる方法
- ・繁殖させた赤ちゃんカナヘビを飼育する
・餌やり時のルールを覚えさせる
・NGな行動は絶対にしない - カナヘビを慣れさせるためのNG行動
- ・過度なスキンシップ
・上からの観察
・飼育ケースを床に置く
人慣れしてくれたカナヘビは非常にかわいく、ペットとして愛おしい存在です。

本記事で紹介したコツを意識しながら、ピンセットに飛びついてくる人慣れカナヘビになってもらえるよう、大切に飼育していきましょう!!

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参考文献および参考著書
- 環境省 『ペット動物販売業者用説明マニュアル』https://www.muji.com/jp/ja/feature/food/460936
- 中村 俊・他 『動物と人間の社会性行動発達とその神経基盤』https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1140080921.pdf
- 持田 浩治・他『社会学習による行動伝播の生態学における役割』https://www.jstage.jst.go.jp/article/seitai/70/3/70_177/_p
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