こどもがカナヘビを捕まえてきたんだけど、生きた虫を捕まえるのが大変・・・。
ホームセンターで安く売っているミルワームを与えてみたら、喜んで食べてくれた!!
本記事は、上記のような方に対する注意喚起となります。
ペットのエサには「ミルワーム」。このような風潮が広まっていますよね!
ペット用の生きエサで王道のコオロギと比べると、
- 鳴かない
- 安い
- 脱走の心配がない
- 動きが遅く扱いやすい
など、さまざまなメリットがあります。
「こんなにコスパもいいエサがあるなら、カナヘビ飼育は簡単だ」
という気持ちになりますよね。しかし、思考停止でカナヘビにミルワームを与え続けるのは危険です。
ミルワームを与えているけど、『ダスティング』や『ガットローディング』という言葉を聞いたことが無い、もしくはピンと来ないという方は、今すぐ、別のエサに切り替えることを検討してください!
本記事では、カナヘビにミルワームを与え続けてはならない2つの理由を解説します。
最後まで読めば、思考停止でミルワームを与え続けるリスクが理解できるでしょう!
思考停止でミルワームを与え続けた場合、近い将来、あなたのカナヘビは病気になってしまうでしょう。もし心変わりをいただけない場合、すぐにカナヘビを捕まえた場所へ逃がしてあげることをお勧めします。
カナパパってこんな人
それでは、本題にはいっていきましょう。
ミルワームとは?
ミルワームってエサ用昆虫としては有名だけど、そもそもどんな虫なんですか?
ミルワームとは、ゴミムシダマシ科の幼虫の総称です。ホームセンターやネットショップで安価で購入することができる、ペット用生きエサの王道とも言えるでしょう。
ミルワームは、丸いプラスチックケースに、フスマ(麦の皮のカス)と呼ばれる床材に入れられ販売されていることが多いです。値段は、50匹で200円~500円程度で販売されているのをよく見かけます。
幼虫特有のウネウネとした動きが、生体の食欲と好奇心をそそります。嗜好性の高さもエサとして選ばれるポイントです。
ミルワームは管理がしやすい生きエサ
ミルワームは、他の生き餌と比べて、管理がしやすいという点も特長です。
常温で管理すると、2週間から1か月ほどで成虫になってしまいますが、低温であればミルワームの成長を遅らせることができます。
冷蔵庫で保管すれば、成虫になる速度が一気に遅くなりますので、無駄なく与えることができるのです。
また、コオロギと比べて動きも遅く、鳴くこともありません。販売者にとっても飼育者にとっても、低コストで管理がしやすい!これこそがミルワームがペットの生きエサとして名高い所以でしょう。
カナヘビにミルワームを与え続けてはいけない2つの理由
ミルワームは安くて嗜好性も高く、管理もしやすい!メリットが多いエサということがわかりました。
でも、なんでエサとしてオススメできないんですか?
理由は、栄養バランスの悪さと、消化のしづらさの2つが挙げられます。
1つずつ、説明していきますね。
①栄養価のバランスが悪い
ミルワームはタンパク質や脂肪は豊富なのですが、ビタミンやミネラルが少なく、栄養バランスがよくありません。
また、床材としていれられている「ふすま」は、エサとしても代用できるのですが、栄養価は高くありません。
「ふすま」のみを食べているミルワームをエサとして与える場合、栄養価が乏しくなってしまうわけですね。
【参考】栄養バランスで重要なのはカルシウムとリンの比率
ミルワームは「カルシウムが少ない」と聞いたことがありませんか?
カルシウムは、爬虫類の骨・歯・甲羅などの成長に欠かせない、重要な栄養素です。しかし、カルシウムをおおく取ればよいというわけではありません。カルシウムは、リンとの摂取バランスによって吸収率は変化します。肉食性爬虫類の場合は、カルシウムとリンのバランスは、1:1~2:1くらいが望ましいですね。
ミルワームにカルシウムが少ないのは事実ですが、実はコオロギもカルシウムは少ないのです。
コオロギ | ミルワーム | |
---|---|---|
カルシウム | 1.5 | 0.49 |
リン | 8.99 | 8.22 |
単純なカルシウムの含有量を比較すると、コオロギはミルワームの3倍のカルシウムを含んでいます。
しかし、コオロギもミルワームもリンが多すぎるため、カルシウムの吸収を阻害してしまいます。なんの工夫もなくカナヘビに与え続けると、クル病の原因となってしまうため注意が必要です。
②キチン質が多く消化に悪い
ミルワームの外皮は、見た目以上に堅いです。実は、ミルワームの外皮はキチン質といわれる素材でできています。
キチン質でできているものの代表例としては、エビやカニの甲殻でしょうか。
実は、爬虫類はキチン質を消化することができないのです。
蛇足ですが、人間もキチン質を消化することができません。そのため「カルシウム補給のためにエビの尻尾を!」というアレ、完全に無意味なのです・・・。
脱皮直前のカチカチのミルワームや蛹を与え続けると、カナヘビにとっては消化不良を招く原因になります。最悪の場合、脱腸の危険性もあります。対策としては、脱皮したての白くてフニフニのミルワームを与えましょう。
ミルワームを与える際には、脱皮したての白いプニプニを選別してください!蛹は決して与えないように!
爬虫類飼育者がミルワームを与えている動画をよく見かけるけど?
ここまで記事を読んでくれた方の中には、
- どうして多くの情報発信者は、ペットのエサとしてミルワームを与えているの?
- みんながミルワームをあげているということは、やはり良質なエサなはず!
- 安く買えるし、やっぱりカナヘビのエサにはミルワームを与え続けよう
と思う方もいるかもしれません。
確かに、多くの情報発信者が、爬虫類にミルワームを与えている画像・動画をよくみかけますよね。しかし、爬虫類飼育に詳しい方であれば、市販のミルワームをそのままペットに与え続けることがいかに体に悪いことかご存じでしょう。
実際に情報を見てみると、
- ミルワームにカルシウムパウダーなどをダスティングして与えている
- ガットローディング済みのミルワームを与えている
など、工夫をしている方がほとんどです。
しかし、初めてカナヘビを飼う場合、「ダスティング」や「ガットローディング」という言葉を知らない方がほとんどなはず。そんななかで、「多くの情報発信者が、爬虫類のエサとしてミルワームを与えている」という情報だけが切り取られ、ミルワームをエサとして与え続け、結果病気になってしまうのではないか?と私は思っています。
ミルワームにはガットローディングとダスティングが必須
ここまでミルワームを否定しまくってきました。
しかし、ガットローディングやダスティングについて十分な知識を持ったうえで行うことができるのであれば、常用のエサとして与えても問題ありません。
ガットローディング?ダスティング?もう少しわかりやすく説明してくださいよ!
はい、1つずつ解説していきましょう!
ガットローディング
ガットローディングとは、エサ用昆虫に栄養価を与え、従来の栄養素を高める方法です。
カナヘビは完全肉食ですが、ガットローディングを行うことで、間接的に野菜などを与えることができるため、不足しがちなビタミン・ミネラルを補ってあげることができます。
なお、ミルワームには、床材として入れられている「ふすま」だけではなく、ドックフードや野菜・果物まで、何でも食べます。カルシウム不足を補うために小松菜をいれたり、ビタミン不足を補うために人参を入れてあげるとよいでしょう。
注意点としては、ガットローディングをしてから12時間以内のミルワームをカナヘビに与えるようにしてくださいね。
ガットローディングしてから時間がたってしまうと、ミルワームに食べさせた食材や栄養価が、糞として外部に排出されてしまいますから!
ダスティング
ガットローディングは、ミルワームに不足しがちな栄養を内から増やしてあげる方法でした。
続いて紹介するダスティングは、外から栄養を増やしてあげる方法です。ペット用に販売されている粉状のサプリメントを、給餌前のミルワームにふりかけ、カナヘビに与えます。
ミルワームにダスティングすべき栄養素はカルシウムです。不足しがちなカルシウムを補充してあげるだけでなく、リンとのバランスを整えることで、カルシウムの吸収を促進する効果もあります。
カルシウム以外に、カナヘビに必要な栄養素としてはビタミンD3がよく挙げられます。しかし、ビタミンD3は過剰摂取によるリスクが非常に高いため、ダスティングはオススメできません。詳しくは別記事をご覧ください。
まとめ ミルワームは栄養バランスと消化が悪い!エサとして与えるには工夫が必須
本記事のまとめです。
- ミルワームのメリット:値段が安く管理がしやすい。また嗜好性が高いのも魅力的
- ミルワームのデメリット:栄養バランスと消化の悪さ
- デメリットの解消方法:ダスティングやガットローディングでミルワーム自体に栄養を補う工夫が必要
- 消化の悪さは、脱皮したての白いミルワームを選別して与えることで解消できる
ガットローディングやダスティングを行うことで、ミルワーム給餌で不足しがちな栄養を補うことができます。
しかし、消化不良を起こしやすいというデメリットの解消には、脱皮したてで柔らかいミルワームを選別して与えることが必要です。ここまですることができれば、ミルワームを常用のエサとして選択しても問題ないでしょう。
しかし、できるだけバラエティ豊かなエサを与えることも意識してみてください。
【合わせて読みたい】エサの悩みを全て解決!カナヘビにオススメのエサ8選と適正量・給餌頻度・拒食対策
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参考文献および参考著書
- 石橋徹 (いのかしら公園動物病院)2007年『爬虫類の栄養学』https://www.jstage.jst.go.jp/article/iuws/13/0/13_13/_pdf/-char/ja
- 川﨑 淨教 2021年『昆虫の飼料利用に関する研究動向と今後の課題』https://www.jstage.jst.go.jp/article/chikusan/92/3/92_265/_pdf/-char/ja
- 日本キチン・キトサン学会 『キチン・キトサンQ&A』https://kei-animal.com/column/column78/
- クレステッド動物病院 『各種餌の栄養組成(1)』https://www.crested-vet.com/nutrition_1
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